「あじストーンフェア2024」を視察した翌日は、庵治石の丁場(採石場)を見学させて頂きました。案内をして頂いたのは、和伸石材の太田社長様。和伸石材様は、庵治の丁場のなかでも特別に管理されたいわゆる「大丁場の会」に属する実績を重ねてこられた山の石屋さんです。太田社長からは、岩盤から火薬を使って石をはがす作業や、石の節理や目といった性質を生かした採石の工夫などについて、とても丁寧にご説明を頂きました。
削岩機とロッド(棒状のもの)が写っていますが、これらの道具を使って岩盤に深さ2m~3m程度の穴を明け、そこに火薬を詰めて爆発力で石を起こすそうです。岩盤には節理といった筋やキズが縦横斜めに走っているので、その流れを見極める力と、より効率良く安全に採石が進められるように先を見る目が求められます。
太田社長のお話しから、貴重な庵治石が無駄なく採れるよう、経験と技術を駆使しながら丁寧に作業が行われている様子が伺われました。何よりも、社長の庵治石に対する愛情と、産地のプライドが強く感じられ、同業者として身の引き締まる思いでした。
岩盤から取り出した原石ブロックには、赤いマークで節理といった筋やキズの印が描かれ、後工程でその箇所を外すようにされています。また、写真には㉖と番号が書かれていますが、採石した順番に原石には連番が割り振られ、番号を見ることで石目や色を度揃えることができるよう工夫されています。
採石に使用する大型の重機。奥には隣の丁場が見えていますが、撮影した場所からかなり標高が低いことが判ります。
石の目が斜めに流れている様子が判ると思います。こちらの丁場は、目がオーバーハング(覆いかぶさるように)なっている為、採石する際には落石の危険が高いという事です。岩盤から石を取り出す作業は、氷を切り出すのとは違って、危険と隣合わせの難作業であることを思い知らされます。庵治石の丁場は断層が多くてキズを避けるのが難しく、断層ごとに違う色目や石目を合わせるのが難しそうです。切削時に中からキズが出たり、研磨後に印象が変わることも多く、墓石として製品化されるのは、あらゆる工程で厳選されたごくわずかな原石だけです。最高級と云われる庵治石の魅力を産地で改めて実感した2日間でした。